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2011年10月13日 (木) 21:47時点における最新版

機動戦士ガンダムF91』(きどうせんしガンダムエフきゅうじゅういち、MOBILE SUIT GUNDAM Formula 91)は、ガンダムシリーズの流れを汲むアニメ映画で、1991年3月に劇場公開された。同時上映は『武者・騎士・コマンド SDガンダム緊急出撃』。

物語[編集]

機動戦士ガンダム』の時代から40年以上、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の時代からは約30年経った宇宙世紀0123年が舞台である。大きな戦乱も無く平和な世界、人類はその大半が地球から月までの軌道に設置されたスペースコロニーに移住し、地球連邦政府という国家の枠組みを超えた全地球規模の組織に統治されていた。

しかし、地球連邦政府は疲弊・腐敗しており、これに対しマイッツァー・ロナは「人の上に立つべき者は、人々の規範となるような高貴な精神を持つ者でなければならない」とする思想「コスモ貴族主義」を掲げ、地球連邦政府の打倒と理想とする貴族主義社会の実現のために、秘密裏に軍事組織 クロスボーン・バンガード(C・V)を設立し、スペースコロニー「フロンティアIV」を急襲する。

街を覆う戦火と混乱と容赦ない死の中で、民間人の少年 シーブック・アノーは襲撃から避難するために、友人達とともにコロニーを脱出するが、同行していた内の一人 セシリー・フェアチャイルドはC・Vに連れ去られてしまう。実はセシリーはマイッツァーの生き別れの孫娘ベラ・ロナだったのである。

シーブック達は近隣のコロニー「フロンティアI」に辿り着き、地球連邦軍の宇宙練習艦スペース・アークに保護される。艦内にはF91と名付けられた整備中のMS(モビルスーツ)があった。

一方、C・Vに占領されたフロンティアIVではコスモ貴族主義の実現のための国家「コスモ・バビロニア」の建国が宣言され、セシリーはコスモ・バビロニアの象徴として祭り上げられることになる。

そして、F91に乗って反攻するシーブックと、専用MSビギナ・ギナを与えられたセシリーは、戦場で対峙する…。

作品解説[編集]

元々はTVシリーズの企画であり、『機動戦士ガンダム』の劇場公開10周年に合わせて、そのTVシリーズ用の構想の最初の数回分にあたるストーリーを劇場用に映像化したものが本作である。時代設定は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の30年後。それまでのシリーズに登場した人物はまったく登場せず、新たな時代と人物による新シリーズの立ち上げを目指して製作された作品である。公開当時までは映像されたガンダムは「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」でストップしていた為、ガンダムブランドは当時映像化されていたSDガンダムで守られていた時期であった。

ファーストガンダムを手がけ、富野由悠季とともにファーストの象徴的存在とも言える安彦良和大河原邦男の両名が久々に参加している。安彦良和はファースト以後の作品ではキャラクターデザインでしか参加していなかったが、「最初のガンダムのように話作りにも参加させてくれるのなら」という条件付きで参加した(しかし、結局はストーリー作りへの参加は実現しなかった。)。彼はF91のアニメーション用アレンジやノーマルスーツのデザイン、それらのカラーリングなども行った。大河原邦男は『ZZ』以来の参加で、作品中に登場するすべてのMSをデザインした。デザインは、第1作以来久々に富野との話し合いにより作られたが、従来から大きく変わったMSデザインには賛否が分かれた要出典。タイアップする立場のホビージャパンでも、ライターからかなり辛らつなレビューをされている。

本作に登場する円盤型の殺人兵器であるバグは「同じ大量殺戮でも、(『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』で使用した)毒ガスより直接的な痛みを感じさせるものが欲しい」という、監督の演出意図に沿って用意された。これは当時、富野が「子供が生のリアルさを失いつつあるのではないか」という強い懸念を持っていたことと関連しており、続いて監督したテレビシリーズ『機動戦士Vガンダム』ではさらにエスカレート、生理的嫌悪感を伴う残虐な死の描写を、「本来の視聴者」である子供に容赦なく突き付けた。

その後、企画されていたはずのTVシリーズが制作されなかった理由については、本作の興行成績が思わしくなかったためであるという説もある。また、サンライズがバンダイに身売りする過渡期の作品という事情も存在する(この件は富野にすら秘密であった)。本作のその後は富野原作による漫画機動戦士クロスボーン・ガンダム』である程度描かれている[1]

劇場公開後、カットの修正やシーン追加のなされた『機動戦士ガンダムF91 完全版』がビデオ販売された(本編フィルム全8ロール中1~6ロールの一部カット修正、7・8ロールに約5分の新作カットを追加して再編集及び音声の再ダビングしたもの)。後に発売されたDVD版では『劇場公開版』と『完全版』の両方が収録されている[2]

登場人物[編集]

各キャラクターの詳細は機動戦士ガンダムF91の登場人物を参照。

スタッフ[編集]

主題歌[編集]

元々は「君を見つめて」がテーマ曲で「ETERNAL WIND」は挿入歌(使用箇所は本編で実際に使われたそのままの箇所で)の予定だったが、富野由悠季の意向により変更された。プロモーションフィルムでは「君を見つめて」が使われている。森口はデビュー曲である『Ζ』後期主題歌「水の星へ愛をこめて」以来のガンダム主題歌であり、「ETERNAL WIND」がオリコン9位に入り1991年のNHK紅白歌合戦に出場するなど、当時バラドルとして活躍していた彼女が再び歌手として認知される契機となった。

また、それぞれの曲を使用した数種類のCMが放映されている。

関連作品[編集]

(小説版)機動戦士ガンダムF91 クロスボーン・バンガード
全2巻の小説が富野由悠季により執筆され、角川書店角川スニーカー文庫)より刊行されている。表紙イラストと挿絵は美樹本晴彦が担当。
上巻の3/4程度は劇場版の物語より過去のエピソードである、クロスボーン・バンガードの母体であるブッホ・コンツェルンやロナ家の成り立ちからマイッツァー・ロナが挙兵に至る経緯、ハイスクール時代におけるシーブックセシリーの出会いなどについて詳細に語られている。また、劇場版の物語の始まりであるC・VのフロンティアIVへの侵攻以降のストーリーでも、劇場版では細かく説明されていない設定や各登場人物の心理描写などが描かれており、より深く作品を理解できる内容となっている。なお、物語の展開は劇場版とは大まかな流れは変わらないものの、設定の一部や終盤の展開が異なる。
(漫画版)機動戦士ガンダムF91
劇場公開に合わせて講談社の少年向け漫画雑誌「コミックボンボン」の1991年1月号から同年5月号に連載された漫画作品。作画は井上大助
少年漫画としてかなり大きくアレンジされており、実直な好青年だった主人公シーブックの性格及び口調がかなり乱暴になっている。
2000年に大都社から『機動戦士ガンダム0080』とカップリング収録で復刻されている。
F91-MSV(機動戦士ガンダムF91モビルスーツバリエーション)
本作の作品世界のモビルスーツ(MS)のデザインや設定を行う企画(モビルスーツバリエーション)。メカニックデザインは本作と同様に大河原邦男が担当。複数の雑誌、情報誌などで展開される。
バンダイ発刊の模型雑誌「B-CLUB」では、本作の劇場公開に先駆けて、ガンダムF91のベースとなったMS、ガンダムF90に関連する企画が発表された。この企画は後述の『機動戦士ガンダムF90』に派生しており、B-CLUB誌上で発表されたMSの内、『機動戦士ガンダムF90』の漫画版に登場しないMSも同作のMSとして分類される場合が多い。
また、本作の劇場公開に合わせて講談社よりガンダムシリーズ専門の漫画雑誌「ガンダムマガジン」が発刊され、アニメ作品中に登場したMSの重装備型などのバリエーションが発表されている。狭義の『F91-MSV』はこの企画を指す。
その他、後述の『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91』も企画当初は『F91-MSV』のタイトルで発表されている。
機動戦士ガンダムF90
詳細は 機動戦士ガンダムF90 を参照
先述の『F91-MSV』より派生した、プラモデルによる企画及び漫画。ガンダムF90の登場に関連して、作品世界での小型MSの誕生の経緯について設定される。漫画版の物語は本作の3年~2年前。地球連邦軍と旧ジオン軍の残党の戦いが描かれる。
機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122
詳細は 機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122 を参照
劇場公開後の1991年夏に発売された、スーパーファミコン用のゲームソフト。 「SFC版F91」「ゲーム版F91」などと呼称される場合も多いが、劇場版のストーリーをゲーム化したものではなく外伝作品であり、登場人物が異なるほか、登場MSも一部が共通するに留まっている。物語は本作の半年~1年前。旧ジオン軍の残党の壊滅と、その裏でのC・Vの暗躍が描かれる。
機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91
詳細は 機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91 を参照
1992年より発表された、プラモデル、小説、漫画によるメディアミックス企画。ガンダムF91の技術を盗用した機体であるシルエットガンダムなどが設定されている。物語の舞台は本作の1ヶ月前。シルエットガンダムの実動試験中におけるクロスボーン・バンガードとの遭遇と、そこから始まる一連の事件について描かれる。
機動戦士クロスボーン・ガンダム
詳細は 機動戦士クロスボーン・ガンダム を参照
1994年から1997年に「月刊少年エース」に連載された、長谷川裕一著の漫画作品。本作の続編であるが、物語は本作の直後からではなく10年後を舞台としており、コスモ・バビロニアは既に崩壊した後となっている。宇宙海賊として再興したクロスボーン・バンガードの木星帝国との戦いが描かれる。
機動戦士ガンダム クライマックスU.C.
詳細は 機動戦士ガンダム クライマックスU.C. を参照
2006年に発売された、プレイステーション2用のゲームソフト。内容としてはガンダムシリーズの映像作品の1つとして本作が収録されている形であるが、SDガンダム作品以外で初めて本作のシナリオが再現されているほか、エンディング曲として本作のテーマ曲である『ETERNAL WIND』が使用されている。
また、漫画版『機動戦士ガンダム クライマックスU.C. 紡がれし血統』は本作の時間軸での物語と、『機動戦士ガンダム』から『逆襲のシャア』までの時間軸での物語を並行する構成となっている。

脚注[編集]

  1. 製作されなかったTVシリーズではベラ・ロナ(セシリー・フェアチャイルド)による反コスモ貴族主義を主張しコスモ・バビロニアが組織内での分裂による崩壊を起こし終戦すると言う話で、クライマックスで木星帝国の存在を知り戦うという構想があったようである。要出典
  2. DVD版『劇場公開版』は、1~6ロールが『完全版』で7・8ロールが『劇場公開版』である為、厳密な意味でのDVD版『劇場公開版』は存在しない。

関連項目[編集]


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